同じ職場のベテランに、毎日気を遣う。ちょっとした一言に傷つく。仕事の大事なことを教えてもらえない、挨拶を返してもらえない。そんな状態が続くと、出勤前から気持ちが重くなってしまいます。
この記事では、いわゆる「お局」との関係に疲れたときに、まず試せること、パワハラとの線引き、相談できる場所、そして環境を変える選択肢を整理します。パワハラの定義、相談窓口、退職のルールは、厚生労働省などの公式情報を確認して書いています。
この記事の結論
- ハラスメントの問題は、我慢していても解決せず、時間とともに悪化することがあると、厚生労働省も注意を促しています。
- まずは「事実の記録」と「信頼できる人への共有」から始めます。
- 改善しないときは、外部の相談窓口を使う道があります。働く場所を変えることも、正当な選択肢です。
この記事は一般的な情報です。個別の出来事がパワハラに当たるかどうかは、状況によって判断が分かれます。迷ったときは、後の章で紹介する窓口に相談してください。
「お局」との関係に疲れてしまう3つの理由
最初に、言葉について触れておきます。「お局」は、年齢や性別で人を決めつけてしまいやすい言葉です。この記事では、年齢や性別ではなく、「職場の古株で、周囲に強い影響力を持つ人」の行動に注目して整理します。
理由1:逆らいにくく、断りにくい
仕事の進め方や職場の事情に詳しい人には、意見を言いにくいものです。その人の協力がないと仕事が回りにくい場合は、なおさらです。関係が悪くなることを恐れて、言いたいことを飲み込んでしまいます。
理由2:何が問題なのか、周囲に伝わりにくい
一つひとつは小さな言動でも、毎日重なると大きな負担になります。ところが、第三者から見ると「いつものこと」「性格の問題」に見えて、味方がつきにくいことがあります。
理由3:逃げ場が小さい
少人数の店舗や、シフトが固定された現場では、同じ人と毎日顔を合わせます。距離を置きたくても、持ち場や時間帯を簡単には変えられません。アルバイトやパートの場合、「立場が弱い」と感じて我慢してしまう人も少なくありません。
こんな行動が続くと、消耗しやすくなります
- 業務に必要な情報を教えてもらえない
- 特定の人にだけ、態度や言葉づかいが厳しい
- 人前で強い口調で注意される
- あいさつや返事をしてもらえない
- 仕事とは関係のない私的なことに、何度も立ち入られる
これらがすべて、法律上のパワハラに当たるとは限りません。ただ、「自分が弱いから」「気にしすぎだから」と決めつける必要はありません。まずは、何が起きているかを整理することが大切です。
感情的に対抗する前に、まず試せる5つの対処法
「やり返したい」「ぎゃふんと言わせたい」と思うほど、追い詰められている人もいるでしょう。その気持ちは自然なものです。ただ、感情のまま対抗すると、自分が消耗するだけでなく、職場での立場を悪くしてしまうことがあります。まずは次の5つを、できるところから試してください。
1. 事実を記録する
いつ、どこで、どんなことを言われた(された)のか、誰が見ていたかを、メモに残します。感情と事実を分けて書くのがコツです。「ひどいことを言われた」ではなく、「◯月◯日の午後、バックヤードで『◯◯』と言われた。同席者は◯◯さん」のように書きます。メールやチャットの文面も、保存しておきましょう。この記録は、後で相談するときに役立ちます。
2. 業務の連絡は、短い文章で残す
口頭の指示は、言った・言わないの行き違いが起きやすくなります。確認が必要なことは、「◯◯の件、◯時までに◯◯でよろしいでしょうか」のように、短い文章で残します。感情を入れず、事実と確認だけにします。
3. 関わる場面を、必要なところに絞る
仕事上必要な会話に絞り、雑談や私的な話題は深追いしません。相手の挑発的な言葉には、「そうですか」と受け止めて、仕事の話に戻します。無理に仲良くなろうとしなくても、仕事は進められます。
4. 信頼できる人に、早めに共有する
一人で抱え込まないことが大切です。厚生労働省の「あかるい職場応援団」も、まずは信頼できる同僚や上司に相談し、改善しなければ社内の相談窓口や人事部に、という順番を案内しています。同じ思いをしている人が、ほかにもいるかもしれません。
5. 「潰す」「やり返す」は、選ばない
お局への対処法を調べると、「潰す」という言葉が出てきます。ただ、陰口を広めたり、周囲を巻き込んで孤立させたりする方法は、お互いに職場を悪くします。こちらが不利な立場になることもあります。力で対抗するのではなく、事実を整理して第三者に委ねる方が、自分を守りやすくなります。次の章で、その見極め方を説明します。
これはパワハラ? 線引きの目安と、相談できる場所
厚生労働省が示すパワハラの3つの要素
厚生労働省の「あかるい職場応援団」は、職場のパワーハラスメントを、次の3つの要素をすべて満たすものとしています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 働く人の就業環境が害されること
業務上必要で、適正な指示や指導は、パワハラに当たりません。つまり、「苦手な人」「言い方がきつい人」というだけでは、当たらないこともあります。一方、人格を否定するような言動は、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものと判断され得ると説明されています。
先輩や同僚の言動も、対象になり得る
「優越的な関係」は、上司と部下の関係だけではありません。同じあかるい職場応援団のQ&Aでは、同僚や部下による言動でも、その人が業務に必要な知識や豊富な経験を持ち、協力を得ないと業務を円滑に進めることが難しい場合は、含まれ得るとしています。また、同僚や部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶が難しい場合も、同様です。
なお、対象になる「労働者」には、パートタイムや契約社員などの非正規で働く人も含まれます。アルバイトやパートだから、相談できないということはありません。
パワハラの6つの類型
厚生労働省は、パワハラの代表的な行為を、次の6つの類型で示しています。ただし、これらがすべてではなく、ここにない行為が問題ないという意味でもありません。
| 類型 | 具体例(厚生労働省の例示) |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 暴行・傷害 |
| 精神的な攻撃 | 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言 |
| 人間関係からの切り離し | 隔離・仲間外し・無視 |
| 過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 |
| 過小な要求 | 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと |
| 個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入ること |
前の章で挙げた「無視される」「仲間外しにされる」は、「人間関係からの切り離し」の例に当たります。ただし、実際に当たるかどうかは、言動の頻度や継続性、状況などを総合して判断されます。
まず、社内の相談先へ
社内の相談先は、信頼できる上司や同僚、人事部、社内の相談窓口です。相談したことを理由に不利益な扱いをすることは、法律で禁止されています。
社内で難しいときは、外部の窓口へ
社内に窓口がない、相談しても取り合ってもらえない、不利益が心配で相談できない。そんなときは、外部の窓口を使えます。
| 相談先 | どんな窓口か |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局・労働基準監督署) | ハラスメントを含む労働問題全般について、専門の相談員が面談または電話で受け付ける |
| 法テラス | 内容に合わせて、解決に役立つ制度や関係機関の窓口を、無料で案内する |
| みんなの人権110番 | ハラスメントを含む人権問題の相談電話。最寄りの法務局につながる |
| こころの耳 | 働く人のメンタルヘルスの相談窓口や医療機関を紹介するサイト |
総合労働相談コーナーに相談するときは、次の事実を整理して持っていくと、話が早く進みます。いつ起きたか、どこで起きたか、何を言われた(強要された)か、誰に言われたか、そのとき誰が見ていたか。前の章で作った記録が、そのまま役に立ちます。
心や体に不調を感じるときは、できるだけ早く、専門の医師に相談してください。
改善しないときは、環境を変える3つの選択肢
記録をとり、相談もした。それでも状況が変わらない。そんなときは、「自分が我慢できないのが悪い」と考える必要はありません。働く環境を変えることは、自分を守るための、正当な選択肢です。
選択肢1:配置やシフトの見直しを相談する
社内の相談窓口に相談した場合、事実関係の確認のあとに、行為者への対応や、配置転換などが行われることがあると、あかるい職場応援団は説明しています。辞める前に、「持ち場を変えたい」「シフトの時間帯を変えたい」と、希望を伝える方法もあります。
選択肢2:退職する(法律上のルールの基本)
退職のルールは、契約の種類で変わります。次の内容は、大阪労働局のよくあるご質問で確認した、一般的な考え方です。
| 契約の種類 | 退職のルールの基本 |
|---|---|
| 期間の定めがない契約(正社員など) | 退職を申し入れた日から2週間で、契約は終了する。会社の同意がなければ辞められない、ということではない(民法第627条) |
| 期間の定めがある契約(有期契約のアルバイト・パートなど) | 原則として、契約期間の途中では辞められない。ただし、やむを得ない事由がある場合は、直ちに契約を解除できる(民法第628条)。その事由が一方の過失による場合は、損害賠償を求められることもある |
どちらの場合も、会社の就業規則に退職の定めがあるときは、原則としてその規定が適用されます。ただし、極端に長い申入れ期間を定めている場合などは、退職の自由を極度に制限するものとして、無効とされることもあります。
自分の契約が、期間の定めのあるものかどうかは、雇用契約書(労働条件通知書)で確認できます。判断に迷うときや、会社が退職を認めてくれないときは、総合労働相談コーナーに相談してください。
選択肢3:別の職場を探す
退職を決める前に、在職中に、求人を見てみるのもひとつの方法です。「こんな職場もある」と知るだけで、気持ちが軽くなる人もいます。職場を探すときは、次の点を決めておくと、選びやすくなります。
- 譲れない条件を3つ決める(シフト、通勤時間、時給、人数規模など)
- 職場の雰囲気を、面接や見学で確認する
- 相談窓口があるか、入れ替わりが極端に多くないかを確認する
面接で聞いてみるとよい質問の例です。
- 「このお店(職場)では、何人くらいで働いていますか」
- 「新人は、どのように仕事を覚えていきますか」
- 「困ったことがあったとき、誰に相談できますか」
退職の手続き(引き継ぎ、貸与物の返却、必要な書類の受け取りなど)は、会社の担当者に確認しておくと、スムーズです。
よくある質問
Q. お局に無視されるのは、パワハラですか?
A. 無視や仲間外しは、厚生労働省が示す6つの類型の「人間関係からの切り離し」の例に挙げられています。ただし、パワハラに当たるかどうかは、3つの要素を満たすか、言動の頻度や継続性などを総合して判断されます。記録を持って、総合労働相談コーナーなどに相談してみてください。
Q. アルバイトやパートでも、相談できますか?
A. できます。ハラスメントの対象となる「労働者」には、パートタイムや契約社員などの非正規で働く人も含まれます。
Q. 会社に相談したら、不利益を受けませんか?
A. 相談したことを理由に、不利益な取り扱いをすることは、法律で禁止されています。それでも不安なときは、会社の外の窓口(総合労働相談コーナーなど)に相談できます。
Q. すぐに辞めても大丈夫ですか?
A. 契約の種類によって変わります。期間の定めのない契約なら、申し入れから2週間で終了するのが原則です。期間の定めのある契約は、契約期間の途中では辞められないのが原則で、やむを得ない事由がある場合に限り、直ちに解除できます。契約書を確認して、迷うときは相談窓口に聞いてください。
Q. 体調が悪くなってきました。どうすればいいですか?
A. 早めに、専門の医師に相談してください。会社に産業医がいる場合は、その産業医に相談する方法もあります。働く人のメンタルヘルスの相談窓口は、厚生労働省の「こころの耳」で探せます。
まとめ:我慢しすぎず、選択肢を増やしておく
- お局との関係に疲れるのは、あなたが弱いからではなく、「断りにくい」「伝わりにくい」「逃げにくい」という構造があるためです。
- まずは、事実の記録と、信頼できる人への共有から始めます。
- パワハラに当たるかどうかは、3つの要素で判断されます。迷ったら、総合労働相談コーナーなどの外部窓口に相談できます。
- 改善しないときは、配置の相談、退職、転職という選択肢があります。環境を変えることは、逃げではなく、自分を守る手段のひとつです。
関連記事
参考・出典
- よくある質問|あかるい職場応援団(厚生労働省):パワハラの定義、3つの要素、6類型、同僚の言動、相談の流れ、不利益取扱いの禁止
- 相談窓口のご案内|あかるい職場応援団(厚生労働省):総合労働相談コーナー、法テラス、みんなの人権110番、こころの耳、相談前に整理する事実
- よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)|大阪労働局:期間の定めがない契約と、ある契約の退職のルール(民法第627条、第628条)
